令和六年1月1日の夜、父は九十三歳の生涯を終え、天国へと旅立ちました。
晩年にあっても、日本武尊と御火焼の翁との間に交わされた酒折宮問答歌について、更に最晩年は白村江の戦い、天智天皇、天武天皇、壬申の乱の通説を覆すべく、『古事記』や『日本書紀』を古代中国の歴史記録の中に埋め込むことで、矛盾を浮き彫りにするという父独自の手法で、残りの生命を燃焼させて研究に取り組んでおりました。
このような父と、人生の一時期を共有し、共鳴し合って下さったことは父にはかけがえのない思い出となったと確信します。
今、彼は天国にあって、おふくろや姉の出迎えもそこそこに、御火焼の翁、天智天皇、天武天皇と卓を囲み、歴史の真実を知るにいたったことでしょう。そして、天界から我々を見下ろして、にやりとほくそ笑んでいるに違いないのです。
犬飼和雄の息子